東京高等裁判所 昭和52年(う)1107号 判決
被告人 佐藤守一 外二名
〔抄 録〕
兇器準備集合罪は具体的危険犯と解すべきであるから、共同加害の目的があるというためには、共同加害実現の高度の蓋然性が事実として存在しなければならず、本件のような迎撃形態における共同加害の目的には相手方の攻撃の蓋然性の存在が要件となっていると解すべきであるのに、原判決が、共同加害の目的は、行為者が共同して実現しようとする加害の意識であり、攻撃を受ける蓋然性が事実として存在することは勿論、その蓋然性を認識することも必要でない旨を判示したのは、法令の解釈適用を誤ったものであって、その誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。
そこで、調査すると、刑法二〇八条の二、一項の兇器準備集合罪は、他人の生命、身体又は財産を共同して害する目的をもって複数人が兇器を準備して集合することを犯罪構成要件とする犯罪であり、法文の上でこのほかに行為者が右各個人的法益を共同して害する行為に出ることの蓋然性があることを要件としていないばかりでなく、本罪は、右目的をもってする複数人の兇器準備集合行為自体が公共的な社会生活の平穏を害する危険があるとして、その行為を処罰の対象とする犯罪であると解せられるから、さらに共同加害実現の蓋然性が存在することを要するものと解されなければならない合理的な理由を見出すことができない。しかも、本罪は、前記個人的法益を侵害する殺傷犯・毀棄犯等の予備罪に類する性格をも具有すると解されるところ、予備罪は、基本的犯罪の実現を目的とする一種の目的犯とみられ、予備罪における目的は、基本的犯罪における故意をその内容としていると解されるから、本罪における共同加害の目的は、基本的犯罪の故意と同様に、未必的で足りると解すべきである。そうであれば、行為者の認識において将来の共同加害行為の実行が条件にかかり確定していない場合であっても、行為者が共同加害の実現若しくはその実現の可能性を認識し、その実現を認容しているならば、その行為者に共同加害の目的があるといわねばならない。このように、共同加害の目的は、もっぱら、行為者の主観に属する事項であるから、その目的とされる共同加害行為が出撃形態であるか迎撃形態であるかにより異るところはなく、迎撃形態の場合でも、その認識認容のほかに相手方から攻撃を受ける蓋然性の存在を要件としていると解することはできない。また、共同加害の目的は、基本的犯罪の故意といえる程度の内容実質を有することを要するが、それをもって足り、共同加害実現の蓋然性を認識することまでを必要としないと解するのが相当である。
そうすると、右の判示と結論において同旨の法令解釈を示す原判決の判断に法令の解釈適用の誤りはない。論旨は理由がない。
(堀江 杉山 浜井)